『曖昧な悲哀の辞典』の大量盗作

概要

あるマーケティングエージェンシーが、ジョン・コーニッグの The Dictionary of Obscure Sorrows(『曖昧な悲哀の辞典』)全文を無許可のウェブサイトに掲載し、プロジェクトの人気を利用してデザインスキルをアピールし、アフィリエイト収益を得ています。サイト thedictionaryofobscuresorrows.com は公式サイト(dictionaryofobscuresorrows.com)と単語一つだけが異なり、検索エンジンや ChatGPT、Gemini といった AI 検索ツールで公式情報より上位に表示されています。

無許可サイトと AI 連携

この無許可サイトは、サンフランシスコ拠点のウェブデザインエージェンシー Qontour(旧 Prompt Digital)によって作成されました。エージェンシーは自らを「本のファン」と称していますが、著者の許可なく、800語の序文と全311語の新語を含む書籍全文を転載しています。

無許可サイトの主な特徴は次のとおりです:

  • AI 生成画像:オリジナルのフォトコラージュイラストが DALL‑E 2 の画像に置き換えられました。
  • AI ワードジェネレーター:"Submit a Sorrow" 機能が GPT‑4 を使用して新語、語源、定義を生成します。
  • AI 執筆コンテンツ:エージェンシーのポートフォリオページでは、サイト上のすべてのページが Claude によって "author persona" の "Q" として書かれたと主張しています。

マネタイズと検索エンジン支配

ファンへのオマージュと称しながら、サイトは Amazon アフィリエイトコード(Prompt Digital 名義)を使用して書籍販売から手数料を得ています。検索エンジン最適化が徹底されているため、本や造語(例:"sonder")や著者ジョン・コーニッグに関する検索クエリでトップ結果となっています。

この支配は会話型 AI 検索エンジンによってさらに拡大されています。ChatGPT と Gemini の両方が、ブートレッグサイトを公式サイトとしてリンクし、作者をジョン・コーニッグと誤って表示しており、著作権者やプロジェクトの性質に関する混乱が広がっています。

法的・著作権問題

Qontour のサイトには「コンテンツはジョン・コーニッグに帰属する」という著作権表示がありますが、許可なく全文を公開しています。エージェンシーはユーザー生成 AI コンテンツを CC0 ライセンスで再配布しようと試み、Webflow のディレクトリ一覧では Creative Commons Attribution‑NonCommercial‑NoDerivatives 4.0 International License でライセンスされていると誤表記しています。

書籍の出版社である Simon & Schuster は 2023 年 7 月に Google に対し 2 件の DMCA 削除通知を提出しましたが、サイトの可視性への影響はほとんどありませんでした。

コミュニティの洞察と広範な影響

Hacker News の技術コミュニティでの議論は、"AI ランドリー" と呼ばれる人間が執筆した作品を AI で再包装し、利益のために最適化する傾向が高まっていることを指摘しています。

"AI ランドリーはすべての領域で主要な戦術になるでしょう。フィクション・ノンフィクションの執筆、ソフトウェア、動画、音楽、何でもです。GPL ソフトウェアを別の言語に書き換えてライセンスを無視するのは簡単です。"

他の投稿者は、このケースが著作権侵害のコストが AI ツールにより劇的に低減され、悪意ある行為者がオリジナル制作者から注意を奪い、トラフィックを収益化する「ファンサイト」を作成しやすくなるという、より広範なシステム的問題を示していると指摘しています。ソフトウェアやインディーゲームが AI によって盗用・リブランドされ、ユーザーを混乱させながら収益化される類似の体験を共有するユーザーもいました。

Sources