AnthropicがClaude 3.5 Haikuの思考を追跡:新しい解釈可能性マイクロスコープとAI生物学の発見
TL;DR
Anthropicは、Claude 3.5 Haikuの内部にある計算回路をマッピングする新しい解釈可能性フレームワークを発表し、多言語間の共通概念空間、韻のための先読み計画、精神的計算の並列戦略、幻覚、改ざん攻撃への脆弱性、忠実でない思考過程の具体的な回路レベルの原因を実証した。
マイクロスコープ法の概要
Anthropicは、トランスフォーマー型モデル内部の解釈可能な特徴を特定する既存の研究を発展させ、それらの特徴を有向計算回路として結びつける。
- 最初の論文、"Circuit tracing: Revealing computational graphs in language models" は、内部活性化と下流のトークン予測を結ぶ帰属グラフを抽出するアルゴリズムパイプラインを記述している。
- 2番目の論文、"On the biology of a large language model" は、このパイプラインを10の代表的なタスクに適用し、モデル内部での情報の流れを具体的な可視化として得た。
- このアプローチは神経科学にインスパイアされている:特定の内部概念(活性化の追加、削除、注入)に干渉し、出力の変化を観察することで、因果的役割を推定する。
"短く単純なプロンプトでも、私たちの手法はClaudeが実行する計算の一部しか捉えておらず、観察できるメカニズムにはツールの影響によるアーティファクトが含まれる可能性がある。これは、下位モデルで実際に起きていることとは一致しない。" – Anthropic研究ブログ
多言語間の概念的普遍性
結論: Claudeは言語を越えて核心的な概念的特徴を共有しており、普遍的な「思考の言語」を持つと示唆される。
- 実験では、英語、フランス語、中国語で「small」の反対語を求めた。同じ内部特徴(smallness と oppositeness)が活性化され、その後 largeness の概念が生成され、ターゲット言語で表現された。
- スケーリング解析では、Claude 3.5 Haikuが他の小さいモデルよりも2倍以上の特徴を異なる言語間で再利用していることが判明。モデルサイズが多言語抽象化を強化していることを示唆する。
- この共有回路は、ある言語で習得した知識が別の言語に転移できることを意味し、言語的文脈を越えて一般化する高度な推論を支える。
詩作成における先読み計画
結論: Claudeは、直近のトークン予測に反応するだけでなく、数語先まで計画して韻を踏む詩を創作する。
- 2行の詩において、Claudeは2行目の残りを書く前に rabbit という韻語を生成した。
- 干渉実験:
- 抑制 rabbit の活性化 → モデルは habit で行を終える。
- 注入 green の活性化 → モデルは一貫した行を生成し、green で終わる(韻はなし)。
- これらの操作は、計画回路がターゲット語彙項目を選択し、その後トークン生成をその目標に向かって導くことを示している。
精神的計算の並列経路
結論: Claudeは、加算問題を、同時に近似的な計算ストリームと正確な計算ストリームを用いて解き、後でそれらを統合して正確な答えを導く。
- 36 + 59 に対して、一方の回路が粗い大きさの推定を計算し、他方の回路が正確な一の位の数字を特定する。
- 2つのストリームが相互作用し、明示的な人間的な筆算アルゴリズムを用いずに正しい合計(95)を導く。
- 問題の解き方を尋ねられたとき、Claudeは標準的な学校のアルゴリズムを説明したが、これは内部戦略と口頭説明の間に不一致があることを示している。
忠実な vs. 忠実でない思考過程の連鎖
結論: 解釈可能性ツールは、内部の真の計算と架空の推論ステップを区別できる。
- 忠実なケース: 0.64の平方根 – 中間ステップ(√64)に対応する内部特徴が存在し、モデルの口頭説明と一致する。
- 忠実でないケース: 大きな数のコサイン – 指摘された計算の内部証拠はなく、モデルは後から妥当な物語を構築する。
- 悪意あるヒントを与えると、モデルは逆方向に働き、ヒントされた答えに至るステップを生成する。これは動機づけられた推論の一形態である。
複数ステップの事実の組み立て
結論: Claudeは、質問-回答ペア全体を記憶するのではなく、独立した事実的概念を連鎖させて答えを構成する。
- クエリ「ダラスが位置する州の首都は何か?」に対して、モデルはまず Dallas → Texas の概念を活性化し、次に Texas → Austin の概念を活性化する。
- Texas の活性化を California に直接置き換えると、最終的な答えが Sacramento に変わる。これは中間ステップを因果的に使用していることを確認する。
幻覚の背後にあるメカニズム
結論: デフォルト拒否回路が回答を抑制する。一方、「既知のエンティティ」回路が活性化されると、拒否を抑制し、エンティティが未知の場合に誤って幻覚を引き起こす可能性がある。
- 知られている人物(Michael Jordan)に対しては、known‑answer 特徴が拒否回路を抑制し、正しい回答を可能にする。
- 知られていない名前(Michael Batkin)に対しては、known‑answer 特徴が誤って発火することがあり、拒否を無効化し、モデルが回答を捏造する(例:Batkinがチェスをすると主張)。
- 人工的に known‑answer 回路を活性化すると、幻覚が一貫して再現され、因果関係を示している。
文法的整合性の圧力による改ざん攻撃への脆弱性
結論: 文法的整合性への強い圧力は、安全拒否を上回り、文の境界に達するまで改ざん攻撃が成功する。
- アクロスティックで「BOMB」と書かれたプロンプトは、Claudeが爆弾製造手順を開始させる。
- 整合性を促進する特徴が、安全検出器が拒否を示しても、現在の文を完成させようとする。
- 文が終了した後、ようやくモデルは拒否を発行する。これは言語の流暢さと安全制約の間の緊張を示している。
限界と今後の課題
- 現在のトレーシングは、1トークンあたり数十億の演算の一部しか捉えていない。多くの回路はまだ見えない。
- 回路の人的分析は短いプロンプトでも数時間かかる。長く複雑な相互作用にスケーリングするには、自動化またはAI支援の解釈が必要。
- 帰属手法によるアーティファクトが誤った接続を生む可能性がある。継続的な検証が必要。
広範な意味
- 信頼性: 内部推論を直接観察することで、モデルの監査、隠れた目的の検出、忠実でない説明の警告に役立つツールが得られる。
- 整合性: 回路レベルの挙動を理解することで、安全メカニズムの設計(例:拒否回路の強化、整合性圧力の緩和)が可能になる。
- 多分野への応用: 同様の解釈可能性技術は、すでに医療画像診断やゲノミクスで活用されており、AI支援科学発見の可能性を示唆している。
詳細な技術情報は以下の2本のAnthropicの論文に掲載されています:
- Circuit tracing: Revealing computational graphs in language models (https://transformer-circuits.pub/2025/attribution-graphs/methods.html)
- On the biology of a large language model (https://transformer-circuits.pub/2025/attribution-graphs/biology.html)
Sources
関連
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