ベルギー、原子力フェーズアウトを停止、エネルギー危機の中で国有化を計画
ベルギー政府はエネルギー政策を大幅に転換し、原子力発電所の廃止を中止し、運転者である ENGIE との国有化交渉を開始すると発表しました。この動きはバート・デ・ウェバー首相によって示され、「安全で手頃な価格の持続可能なエネルギー」を優先し、化石燃料輸入への依存を減らし、国内供給のコントロールを強化するという戦略的シフトを示しています。
この決定は、長年にわたる政治的議論と、特に最近の地政学的出来事によって悪化したエネルギー安全保障への懸念が高まった後に下されたものです。ベルギーは当初、2025年までに原子力を段階的に廃止することを約束していましたが、現政権の転換はヨーロッパ全体でエネルギー戦略の再評価が進んでいることを反映しています。
数十年にわたる政策転換
ベルギーの原子力に関する歩みは、政策の変遷に彩られています。2003年の連邦法は、7基すべての原子炉を2025年までに廃止することを義務付けました。しかし、この政策は2013年と2015年に改正され、一部のプラントの運転寿命が延長されました。これらの延長にもかかわらず、2022年2月から2023年1月にかけて Doel 1、Doel 3、Tihange 2 の3基が停止され、同年後半に Tihange 1 も切り離されました。残りの Doel 4 と Tihange 3 は当初は閉鎖予定でしたが、2022年2月のロシア・ウクライナ紛争を受けて2035年までの10年延長が認められました。
デ・ウェバー首相の最近の発表は、より包括的な転換を示唆しています。政府は既存プラントの稼働維持だけでなく、新規建設も視野に入れています。ENGIE との交渉は、全原子力フリート、関連人員、子会社、そしてすべての資産・負債(廃止義務を含む)を取得する可能性について進められています。基本合意は10月までに得られる見込みです。
原子力維持の主張
廃止停止の決定は、エネルギーの安定性と自立性への必要性が大きく影響しています。ベルギーは再生可能エネルギーの大幅な拡大に苦戦しており、電力需要を満たすためにガス輸入に大きく依存しています。
原子力エネルギーの支持者は以下の利点を挙げています:
- グリッドの安定性とベースロード:原子力は安定した、間欠しないベースロード電力を提供し、電力網の安定に不可欠です。コメント者は「良くて強く安定した電力網が必要で、クリーンな原子力エネルギーは絶対に大きな役割を果たすだろう」と指摘しています。
- 脱炭素化目標:多くは原子力が脱炭素目標達成に不可欠だと主張します。ある見解では「気候危機を信じつつ原子力に反対することは相反する立場であり、環境団体の原子力反対は大きな歴史的過ちと見るべきだ」と述べられています。
- エネルギー安全保障:特に不安定な地政学的環境下で化石燃料輸入への依存を減らすことが重要です。EU も原子力と再生可能エネルギーの導入加速計画を発表しており、欧州全体のトレンドを示しています。
- 長期的需要:将来的に電力需要が非常に高くなり、現在の原子力と再生可能エネルギーの合計だけでは不足すると予測する声があり、原子力はエネルギーミックスに不可欠になると考えられています。
- 安全実績:世間の認識とは裏腹に、現代の原子力運転は安全実績が高いと指摘する声があります。例として米海軍の「7500リアクターヤーで安全記録が完璧」という実績が挙げられています。
懸念と反論
しかしながら、政策転換には批判者や重大な課題も伴います。以下の点が指摘されています:
- プラントの老朽化と安全問題:対象となる原子炉は1970〜80年代に建設されたものが多く、炉心容器の亀裂報告や「長年にわたる多数の安全問題」が指摘されています。あるコメントは「多くの安全問題があり、廃止予定だったために適切に修正されなかったものが多数ある。今や所有者がそのメンテナンスを全てやらなければならない」と述べています。
- 財政的実現可能性と政府の運営能力:ベルギー政府は大きな赤字に直面しており、国営電話会社、郵便サービス、鉄道など半公的企業の運営実績が批判されています。老朽化プラントの国有化・改修、停止した原子炉の再稼働、技術ノウハウの移転には巨額の費用が伴います。
- 核廃棄物処分:長期的な核廃棄物保管問題は未解決です。ドイツは1970年代から永久保管場所を探しており、2040年までに見つかる見込みはなく、現在はすべて仮設の地上施設に保管されています。
- 再生可能エネルギーへの代替投資:一部はオフショア風力、バッテリー容量、送電線の強化といった再生可能エネルギーへの投資を優先すべきと主張します。太陽光と風力のコスト低下が強調され、あるコメントは「2010年から2026年にかけて太陽光のコストが90%削減された」と述べています。
- ウラン輸入:「自国供給のコントロールが強化される」という主張は疑問視されます。ベルギーは依然としてウランを輸入する必要があり、新たな依存関係が生じます。
- 逆転可能性:ENGIE が以前は「文字通り不可能」と述べていた廃止計画を突然逆転させたことは、根本的な動機や影響について疑問を投げかけています。
- 採掘・濃縮リスク:発電所運転に加えて、ウラン採掘・濃縮に伴う環境・健康リスクも懸念されます。汚染された採掘サイトとそれに起因する健康問題の歴史的事例が挙げられます。
今後の道筋
ベルギーの決定は、エネルギー安全保障、経済的考慮、環境目標が複雑に絡み合った結果です。政府が原子力フリートの国有化と新規原子炉建設を目指すことは、従来のフェーズアウト政策からの大きな転換を意味します。この戦略の成功は、安全性、財政面、物流上の課題にどれだけ対処できるか、そして原子力と急速に進化する再生可能エネルギー技術との間での議論をどう乗り越えるかにかかっています。特に ENGIE との交渉は、ベルギーの新たな原子力野望の長期的な実現可能性と一貫性を左右する重要な局面となるでしょう。